「フレーバーホイール」という言葉を聞いたことがありますか?フレーバーホイールとは、SCAA(米スペシャルティコーヒー協会)が作成した、コーヒーの味を表現するための円状をした指標のことです。
細かくカテゴリー分けされており、110種類もの香味表現があるため、スペシャルティコーヒーをカッピングする際にも役立つツールです。
今回はその中にあるサワー・オリーブオイルという香味表現やちょっと変わった表現に焦点をあてて解説します。
フレーバーホイールは大別にすると9項目
フレーバーホイールの内側にある円を見てみると、9項目の表現に分類されています。
「フローラル、フルーティー、ナッティー・ココア、甘味、酸味・発酵、野菜、スパイス、ロースト、その他」です。
そして円の外側にいくにつれて、9項目の味がより細分化されています。
例えば、フローラルの中にも、「ブラックティー、フローラル」と分かれており、さらに「カモミール、ローズ、ジャスミン」と風味の特徴が表現されています。
よくコーヒーのテイスティングをした時に、「華やかな香りがする」なんて表現をしますよね。これはフレーバーホイールでいうフローラルに当てはまっているのでしょう。
酸味の表現について
ここでは酸味の表現についてお伝えします。フレーバーホイールの中で、酸味の表現は「酸味・香味」の項目に書かれています。
「サワー」と「発酵」の2つに分かれており、そこからさらに細かく分類されています。それぞれの酸味表現を見ていきましょう。
サワー
サワーの酸味表現は以下の通りです。
酢酸
酪酸
イソ吉草酸
クエン酸
リンゴ酸
サワーの表現には、フルーツの様な良い表現もあれば、劣化など悪い表現も含まれています。
例えば、リンゴ酸はその名の通りリンゴを連想する「フレッシュで爽やかな酸味」ですが、酢酸はネガティブなイメージでの「すっぱさ」、酪酸は銀杏のような「臭いにおい」を連想させます。
また、イソ吉草酸は「汗、足のにおい」を連想させる表現です。おいしいコーヒーを飲んだ時にはこのような表現になることはまずないと考えられます。
しかし、劣化したコーヒーを飲んだ時には、このような悪い表現に当てはまることもあるのでしょう。
発酵
続いて「発酵」の酸味表現です。
「ワイニー、ウイスキー」
見ておわかりのように発酵の表現は意外にも多くありません。
「ワイニー」と聞くと赤ワインか白ワインのどちらなのか疑問に思うかもしれませんが、赤ワイン系の濃厚な芳香もあれば、熟した果実のようなほど良い酸味がある白ワインのような味わいも含まれています。
最近では、コーヒーチェリーを収穫後そのまま乾燥させる「ワイニー製法」と呼ばれる製法があります。この製法で作られたコーヒーはワインのような風味をもたらすため、ワイニーの表現がぴったりです。
また、「ウイスキー」という表現には、コーヒーからウイスキーのような香りがするものを表しています。
実際に、ウイスキーの空樽にコーヒーの生豆を入れ、熟成させてつくる製法もあり、このようなコーヒー豆は「ウイスキー」のカテゴリーに当てはまるでしょう。
オリーブオイルの表現について
フレーバーホイールの中にある「オリーブオイル」は、「酸味・発酵」の項目ではなく「野菜」の項目になります。オリーブオイルという表現は、オリーブの果実や草のにおいを連想させたものです。
ちなみに、「野菜」の項目には、オリーブオイル以外に、「生野菜」「植物・野菜」「豆臭い」といった中項目があります。
「植物・野菜」はそこからさらに細かく分類され、「えんどう豆のさや、干し草、ほうれん草、ハーブ……」などなど、一見コーヒーの味からは想像つかないような野性味のある表現が特徴です。
えんどう豆のさや、ほうれん草などは、要するに青臭いということを意味しているのでしょう。
また、干し草の表現が合うコーヒーは、単純に鮮度の落ちた古いコーヒー豆なのかもしれませんね。
「その他」の項目には驚くべきこんな表現も!
フレーバーホイールの、その他の項目は、「紙・カビ」「薬品」といった2つに中分類されます。
「紙・カビ」をさらに細かく分類すると、「ダンボール、紙、木材、カビ臭い、ほこり、獣臭、ブイヨン、フェノール系、防腐剤」といった表現があります。
味の表現としてあってはならないようなワードばかりで、驚かれたのではないでしょうか。
さらに、「薬品」の項目には、「苦い、塩っぽい、消毒液、スカンクの放つにおい、ゴム」とあります。
もはや、このような風味のするコーヒーは、スペシャルティコーヒーとして選ばれないのはもちろんのこと、好んで飲みたいという人も少ないのではないでしょうか。
フレーバーホイールを眺めながらコーヒーのテイスティングを楽しもう
今回はフレーバーホイールの酸味表現を中心に、ちょっと変わった表現について紹介しました。
酸味の表現は「酸味・香味」の項目にあり、「サワー」と「発酵」に分類されていることがわかりました。
サワーの中でも、酸っぱさの表現には良いイメージもあれば、悪いイメージを連想させるものもあります。
それだけ、コーヒー豆には味や特徴に違いがあり、その個性を言葉に表すには、細かい特徴を示す指標が重要なのでしょう。
また、「カビ臭い」などの表現は、スペシャルティコーヒーの判別だけでなく、コーヒーの鮮度を見分けるのにも大切なツールであることに間違いありません。
フレーバーホイールは日本語版があります。ぜひ、あなたも自宅でコーヒーを飲みながら、どの味の表現に当てはまるか、テイスティングを楽しんでみてはいかがでしょうか。