ハンドピックとは、コーヒー豆に混入している欠点豆や異物を人の手によって選別することをいいます。地味で根気のいる作業ですが、ハンドピックを行うことでコーヒーの味は格段に良くなるので、欠かせない一手間といえるでしょう。
今回は、コーヒー豆を選別するハンドピックについて解説します。
ハンドピック
コーヒーを自家焙煎している喫茶店などで「ハンドピック」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
手作業で欠点豆を取り除く
ハンドピックとは、欠点豆や異物を人の目で確認して除去する作業のことをいいます。
焙煎後に欠点豆が見つかるものがある
もちろん、生産地でもハンドピックを行っているところもありますが、中規模・大規模のロースターでは豆の取扱量が多いため、選別機を導入して混入物を取り除くことが一般的です。
そのため、丁寧な手作業となるハンドピックを行うロースターは限られています。
選別で除去しきれていないものをチェック
選別で除去しきれなかったものを、人の目でチェックすることで欠点豆が含まれる可能性が少なくなります。欠点豆がどれくらい含まれているかは、豆自体のグレードに比例するので、スペシャリティコーヒーといわれる豆は、他のグレードと比較して欠点豆の混入は格段に少なくなっています。
グレード
コーヒー豆も農産物です。そのため、収穫してから出荷するまでのさまざまな工程や日本までの輸送期間、保管環境などによってどうしても傷みが生じることがあります。
この痛んだ豆を「欠点豆」と呼びますが、欠点豆があるとコーヒーの味が悪くなります。
スペシャルティコーヒーにはほぼない
味が悪くなるといわれている欠点豆の特徴は、「イヤな苦み」や「妙な酸っぱさ」「焦げ臭さなどの異臭」などです。
そして、この欠点豆がほとんどないのが、スペシャリティコーヒーです。スペシャリティコーヒーは、現地でハンドピックされているものがほとんどですが、農産物である以上、欠点豆が全くないということはありません。
そのため、スペシャリティコーヒーを扱っている多くの店では、独自にハンドピックを行っています。
低価格だと欠点豆が多い場合がある
日本で購入するコーヒー豆の多くは比較的グレードの高いコーヒー豆のため、体調を崩すほどの異物や欠点豆はありませんが、価格の安いコーヒーには欠点豆が多く含まれている場合もあります。
欠点豆が多いと雑味が出ることで本来のコーヒー豆味わいを引き出しにくくなってしまうだけでなく、異物の種類や異物の量によっては胃もたれ、胸やけ、下痢などの体調不良に繋がることもあります。
そのため、低価格のコーヒーを購入した場合は、手間のかかる作業ですが、ハンドピックを行って欠点豆をなくすことが大切になります。
コーヒーの欠点豆ってどんな豆?
では、欠点豆とはどのような豆のことを呼ぶのでしょうか。
【未熟豆・白っぽく見える・衝撃で割れる・欠ける】こんな豆が欠点豆
生豆の状態で豆をよく見ると、黒い小さい穴が開いている豆がありますが、これは、虫に食べられた跡で「虫食い豆」と呼ばれています。さらに虫食い穴や欠けた豆の断面にカビが生えてしまったのが「カビ豆」です。
また、発酵過程で豆の一部が黒ずんでしまうのが「発酵豆」で、さらに発酵が進むと豆全体が黒くなる「黒豆」になります。黒豆は、カップ一杯の豆の中に一粒でも混ざっていると味も香りもひどいものになってしまいます。
他にも煎りムラを起こす「貝殻豆」やイヤな渋みや酸味、青臭さが出る「発育不良豆」、風味が希薄で異臭のもとになる「死豆」白っぽく見える「未熟豆」精製、運搬途中で割れたり欠けてしまった「欠豆」などがあります。
また、平豆のコーヒー豆が、丸い形になっているピーベリーは、厳密にいうと欠点豆ではありませんが、焙煎の度合いが他の豆と違うので、取り分けてピーベリーだけを集めたコーヒーを楽しむのもおすすめです。
しかし、ハンドピックですべての欠点豆を取り除けば良いかというとそうでもありません。
例えば、イエメンのナチュラル豆をハンドピックして欠点豆をすべて取り除いたら、そのコーヒー豆の持つ独特な風味までなくなってしまうことがあります。この場合は、ある程度の欠点豆を含めた味が「そのコーヒーらしさ」を表現していたことになるのです。
また、豆の先が割れている「先割れ豆」は、欠点豆と考えられますが、インドネシアのスマトラ式という精製方法では欠点豆とみなしません。スマトラ式のコーヒーは、先割れ豆でも焙煎すると普通の豆の形になり、味も香りも問題なくなります。
ハンドピックのやり方
では、ハンドピックはどのように行えば良いのでしょうか。ここでは、簡単にハンドピックのやり方を紹介します。
1.黒い紙を敷いたトレイに生豆100gほどを乗せる。
2.トレイを左右に動かすと豆の丸みを帯びた側が上になるので、この段階でわかる欠点豆を取り除く。欠点豆は、左右に動かすときに変な動きをすることや裏返しにならず平らな面を見せていることが多い。ピーベリーもこの段階で取り除く。
3.わかりやすくするために、豆を3列にして一粒ずつ裏返しながらチェックしていく。また、煎りムラを防ぐために小さすぎる豆や形の悪い豆も取り除く。この段階で、欠点豆かわからない豆も取り除いておくと良い。
4.最後は、大きな豆と普通の豆に分けて終了。
どんなに良質な生豆でも、ハンドピックを行うと5~20%程度は減少してしまいます。
ハンドピックするタイミングは?
ハンドピックは、できれば焙煎前と焙煎後に行うようにしましょう。
焙煎前のハンドピックで形のいびつなものや黒豆、石などの異物を取り除くことはできますが、焙煎後もハンドピックを行うと、焙煎前にはわからなかった欠点豆を見つけることができます。
また、焙煎前にしっかりハンドピックしておけば、焙煎後は、他の豆よりも色の薄いものをピックアップして取り除けば良いので簡単です。
コーヒーを挽く前に自分でハンドピックをしてみよう
金額の高いスペシャリティコーヒーには、ほとんど欠点豆は入っていませんが、ゼロではありません。
また、お手ごろな価格で手に入れた豆には、ある程度の欠点豆が入っていると考えて良いでしょう。根気のいる作業ですが、欠点豆を取り除くことでいつも飲んでいるコーヒーよりワンランク上の味を楽しむことができます。
ぜひ一度、ハンドピックにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。欠点豆を取り除けば、味にまとまりができ、驚くほど美味しいコーヒーを味わえるかもしれませんよ。