「コーヒーとの出会い」ジャパンバリスタチャンピオンシップ(JBC)3度優勝 鈴木樹氏

【鈴木樹(スズキ ミキ)氏プロフィール】

株式会社丸山珈琲 バリスタ
ジャパンバリスタチャンピオンシップ(JBC)では、JBC史上初の3度(2010年、2011年、2016年)の優勝。
2017年の世界大会では準優勝に輝く。現在は日本国内にとどまらず、セミナーの講師やゲストバリスタとして海外でも活躍。

2009年 ジャパン ラテアート チャンピオンシップ 第6位
2009年 ジャパン バリスタ チャンピオンシップ 第9位
2010年 ジャパン ラテアート チャンピオンシップ 第6位
2010年 ジャパン バリスタ チャンピオンシップ 優勝
2011年 ワールド バリスタ チャンピオンシップ 第5位
2011年 ジャパン バリスタ チャンピオンシップ 優勝
2012年 ワールド バリスタ チャンピオンシップ 第4位
2013年 ジャパン バリスタ チャンピオンシップ 準優勝
2014年 ジャパン バリスタ チャンピオンシップ 第3位
2015年 ジャパン バリスタ チャンピオンシップ 第4位
2016年 ジャパン バリスタ チャンピオンシップ 優勝
2017年 ワールド バリスタ チャンピオンシップ 準優勝

鈴木樹氏

コーヒーとの出会い

実家では幼い頃から毎日両親が朝食にコーヒーを飲んでいます。そんな家庭で育ち、コーヒーに最初に出会ったのはいつなのか思い出せないほど身近でした。
しかし、私自身は20歳を過ぎるまでコーヒーはほとんど飲みませんでした。
そんな私が、バリスタになったきっかけは、よくある話なのですが…カフェでラテアートに感動し、バリスタに憧れ、コーヒーショップの門を叩きました。
はじまりは特別なストーリーもなく、きっと今バリスタをしている人の中で100人いたら30人くらいはそう答えるのではないかというよくある話なのですが、私は本当に環境と人に恵まれ、働いてからどんどんコーヒーにのめり込んでいきました。

当時の上司であった店長は、取り扱い銘柄の説明をしてくれていたはずが、感情が入りすぎて涙ながらの感動のプレゼンになったり、先輩は体調が悪くなるまで、コーヒーの抽出にむきあって休憩室でぐったりしていたり、同僚はお客様とコーヒー豆の粒を見ながら、この形が可愛いんですという話で盛り上がっていたり。
純粋なコーヒーが好きという気持ちが突き抜けて、共感を生み、周りを巻き込んで幸せを生み出している光景がたくさんありました。
コーヒーの持つ力を感じた最初の原体験で、毎日仕事に行くことが、淹れることが、コーヒーを通じて人と会うことが楽しくてしょうがなかったです。
最初はラテアートの美しさに惹かれていたはずが、どんどんのめり込み、バリスタになる以前にコーヒーも人も好きになりました。

コーヒーとの出会い

この経験から、他のコーヒーショップや、バーやその他の嗜好品の専門店に行き、お店の方の愛ある商品推奨トークを聞くということが私の趣味に加わりました。
どの分野の方でも共通して限られた環境の中で専門的な知識を分かりやすく、情熱を込めて話され、自分自身の世界が広がる体験がたくさんありました。
相手に普通の商品売買や、飲食した体験以上に心揺さぶるものをいただいて、今振り返っても、脳みそに焼き付いて、その時の香りすら鮮明に思い出せます。
どんな分野の物事でも私にとっては「人」が大切です。「誰が淹れるのか」私がコーヒーを通じて提供したい体験でもあります。

私にとってコーヒーとは

私は、2008年に丸山珈琲で働きはじめ、2009年に初めてラテアートやコーヒーを抽出するバリスタの大会に挑戦しました。
それから、世界大会を加えると10回以上大会に参加し、自分自身の大会だけでなく会社のスタッフのトレーニングでも長年にわたり深く関わってきました。
その中で、必然的に「抽出」に向き合ってきました。そもそも抽出に向き合うとはどういうことだろうかと、それを言葉にするとどういう表現になるのだろうかと考えてきました。

最初の時期は毎回同じ作業ができる、タンピングであれば真っ直ぐ押せる、という基礎的なことを練習し、それができた上でコーヒーが美味しいか確かめるということの繰り返しが抽出に向き合うことでした。
この時は正解やゴールが明確で出来た時の達成感は高く、前に進んでいるという高揚感から、練習が非常に楽しい状況でした。まさにナチュラルハイです。

これがある程度できた後、次は「この豆のもつ良さを最大限に活かせるか」ということが抽出に向き合うことでした。
この時期は明確な正解はなく、今まで以上により精度の高い他者との味覚のすり合わせが必要でした。自分が良いと思うものと他の人が良いと思うものがどの部分が一致していて、一致していないのかを細かく見ていくことが必要で、少なくとも一度はどん底にハマります。でも、だからこそそれができた時には、初期の頃には味わえなかったような、人とコーヒーの美味しさを分かち合う、溢れるような喜びがあります。途中の過程がかなり大変でも、すっかり忘れてまた同じ体験をしたいと思い、さらなる深みに沈んでいきます。

そして最後。最後というより現段階の最新版では、「このコーヒーを通じて何を伝えたいのか」というのが、抽出に向き合うことでした。
ある程度美味しいものが淹れられて、さらにそこから突き抜けるには一歩足りない。でも何が足りないのか分からない、私が大会で3回目に優勝する前4年考えていました。これは今も何が正解なのかは、正直よく分からないです。
私は他の嗜好品の世界で体験したような、心震える体験がコーヒーでも生み出せると思っています。それは、大会に限らず実際のお店や友人に淹れるコーヒー全てに共通していて「コーヒーを淹れる理由」「その人に合った体験の提供」「何を伝えるべきか」を明確にし、それをコーヒーの液体へ反映させることによって心震える体験をコーヒーで生み出せると確信しています。

この1年で、世界も日々の生活も全く変わってしまいました。
新しい生活様式の中、私も自宅でコーヒーを淹れる機会が今まで以上に増えました。
そこで改めて感じるのはコーヒーの持つパワーの力強さです。
コーヒーを淹れるだけで、コーヒーが美味しいだけでホッと心が整い、エナジーがチャージされます。

私にとってコーヒーとは、人とのコミュニケーションツールということだけでなく、幸せを分かち合うための媒体です。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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コーヒーステーション編集者
自分ではなかなか難しいコーヒー選びをサポートすること。コーヒー器具の開発、販売を手がける株式会社ハリオ商事自ら、コーヒーの淹れ方やコーヒー豆の選び方などを発信しています。

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