高品質なコーヒーの提供を手助け。ワールドコーヒーリサーチとはどういう機関?

高品質なコーヒーの提供を手助け。ワールドコーヒーリサーチとはどういう機関?

コーヒー好きな人でも「ワールドコーヒーリサーチ」と聞いて、すぐにどんな役割を担っている機関かわかる人は少ないのではないでしょうか。

今回は、あまり知られていませんが、高品質なコーヒーを作るためになくてはならないワールドコーヒーリサーチという機関について解説します。

ワールドコーヒーリサーチという機関

ワールドコーヒーリサーチ(World coffee Research)は、略してWCRと呼ばれる機関で、アメリカ合衆国テキサス州にあるテキサスA&M大学のノーマン・ボーローグ国際農業研究所が本拠地となっています。

ここで、ワールドコーヒーリサーチは、世界20ヶ所以上のコーヒー研究機関や先進的科学研究所とネットワークでつながり運営されている非営利団体です。ワールドコーヒーリサーチが行う研究は、主に以下の通りです。

1.気候変動がもたらすコーヒー栽培への影響を研究
2.コーヒーの品質向上のための研究
3.コーヒーの生産性を向上させるための研究
4.コーヒーの木に対する病気や害虫の研究

他にも、コーヒーに関するあらゆる研究がワールドコーヒーリサーチを中心に世界中で行われ、原産地に対応した新しいテクノロジーの提供によるイノベーションや品質、収量安定化、効率的な運営を行えるように手助けをしています。

ワールドコーヒーリサーチという機関

2050年問題って?

コーヒー業界で以前からささやかれている2050年問題をご存じですか。

コーヒーを取り巻く環境は、年々厳しくなっており、ワールドコーヒーリサーチの報告書によれば、コーヒー生産の6割ほどを占めるアラビカ種の生産に適した土地が2050年には半減する危険性を指摘しています。

これが、2050年問題ですが、どのようなことが原因となっているのでしょうか。

・地球の温暖化
コーヒーは、コーヒーベルトと呼ばれる赤道を挟んで北緯25度~南緯25度の温暖で雨期と乾期がはっきりしている気候を有する地域が栽培に適しているとされています。

また、昼夜の寒暖差が大きいほど美味しい豆が収穫できるため、コーヒー農園は、標高の高い山などに多くみられますが、温暖化によって異常な暑さや雨期と乾期のバランスが崩れ長期の干ばつに見舞われる生産地が増えることが考えられます。

・病害虫が増える
コーヒーは、主に酸味と香りが強いアラビカ種と苦みが際立つロブスタ種の2種類があり、中でもアラビカ種は人気で、コーヒーの総生産量の約6割を占めています。

しかし、アラビカ種は、気温の変動や病害虫に弱い特徴があるため、現在は栽培に適しているとされている土地の半分以上は、2050年までに不適切な土地になると考えられています。

特にブラジルでは、栽培に適した土地の6割が失われると予測されているのです。環境の変化によってコーヒー栽培の大敵である「さび病」が増える可能性も高くなります。

・需要拡大
世界のコーヒー消費量は、約990万トン(2021年)で、EU、アメリカ、ブラジル、日本などに続いて中国が9位となっています。

しかし、消費の伸び率に限っていえば、EUやアメリカ、ブラジル、日本などが1~3%なのに対して中国は6%以上拡大しています。いまのところ、中国は、外出先のカフェなどでコーヒーを楽しむ程度ですが、家庭で飲み始めるようになると今以上のペースで需要が伸びていくことが予想されます。

他にも生産国として知られていたブラジルやインドネシアも経済成長を背景にコーヒーの消費量が増えています。

このように、急速に消費が増えれば需要バランスが崩れ、コーヒー不足になり価格も高騰することが懸念されます。

・農園のコーヒー離れ
コーヒー豆は、収穫できるまでに3~5年ほどかかりますが、価格の低迷によって、すぐに収穫ができて収入につながる作物への転作や耕作放棄が増えてきています。

ワールドコーヒーリサーチの取り組み例

では、実際にワールドコーヒーリサーチは、どのような取り組みを行っているのでしょうか。

例えば、キーコーヒー株式会社は、日本で初めてのワールドコーヒーリサーチのゴールドメンバーとして国際品種栽培試験(IMLVT)に協力しています。

IMLVTは、病害への耐性や味わい深い品質のコーヒーを永続的に生産できる品種を探し出すことを目的として、世界中のコーヒー産地で選ばれた優良品種の栽培試験を行っています。そのため、キーコーヒー株式会社がもつインドネシアの農園を研究場所として提供するなど全面的に協力しています。

このように、世界各国の企業や研究所がカップクオリティで選ばれるような美味しいコーヒーを安定的に普及できるような研究、生産者の育成などの活動をグローバルに行っています。

美味しいコーヒー

いつまでも美味しいコーヒーが飲めるようにするには

将来、地球温暖化や需要拡大、農園の減少などによって当たり前のように美味しいコーヒーを楽しむことが難しくなるかもしれません。

そのような問題を解決するために、コーヒーの安定供給や品種改良などを研究しているワールドコーヒーリサーチがあります。

時には、美味しいコーヒーを作り出すために多くの人が携わっていることに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

投稿者アバター
コーヒーステーション編集者
自分ではなかなか難しいコーヒー選びをサポートすること。コーヒー器具の開発、販売を手がける株式会社ハリオ商事自ら、コーヒーの淹れ方やコーヒー豆の選び方などを発信しています。

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