コーヒーは、入れる道具や入れ方によって味わいが変わる奥深い飲み物です。日本では、多くの人がドリップコーヒーと呼ばれる透過法で入れていますが、他にもコーヒー好きの人から注目されている「浸漬法」もあります。
今回は、あまり馴染みのない浸漬法の種類や入れ方などについて解説します。
コーヒーの入れ方のひとつ『浸漬法』とは?
コーヒーは、水分とコーヒーの抽出成分でできている飲み物ですが、コーヒー豆を挽いた粉をどのように入れるかによって味わいが変わってきます。
一般的にコーヒーの入れ方は粉をフィルターに入れてお湯を注ぐ「透過法(とうかほう)」とコーヒーの粉をお湯に浸けて少し時間を置く「浸漬法(しんしほう)」があります。「浸漬法」は、透過法よりも粉がお湯に浸かる時間が長いので、より濃厚なコーヒーの味と香りを楽しめる方法です。
この方法は、コーヒーの粉をお湯に一定時間、浸けることでコーヒー成分を余すことなく抽出できますが、入れ方によっては雑味が出てしまう場合もあるので、少し工夫が必要な入れ方と言えるでしょう。
コーヒーの抽出方法は複数ある!浸漬法の種類
では、浸漬法にはどのような入れ方があるのでしょうか。ここでは5種類の入れ方をご紹介します。
1.カッピング
プロのコーヒーマンやバイヤーなどが行っている方法で、コーヒーを一定の時間お湯に浸けた後に、アクやカスを捨て上澄みだけをスプーンで飲みます。
2.プレス
浸漬法の代表的な入れ方で「フレンチプレス」とも呼ばれています。
この入れ方は、まず紅茶を入れる時に使うような器具に粗挽きのコーヒー粉とお湯を入れて4分ほど置きます。次にブランジャーを下げてコーヒー成分が抽出されたお湯と粉を分離させてカップに注ぎます。
フレンチプレスの味わいの特徴は、ドリップコーヒーに比べてお湯に浸ける時間が長いので、より濃厚な味を楽しめるところ。プレスは、入れ方が簡単なので、粉の量やお湯に浸ける時間を決めれば、毎回安定した味を出せるのが特徴です。
3.サイフォン
サイフォンは、古い映画やドラマで雰囲気の良い喫茶店のマスターが入れているイメージで理科の実験室にあるフラスコのような形をしています。
サイフォンの入れ方は、下にあるフラスコの水を沸騰させると気圧によってお湯が上の容器に上がりコーヒーと混ざって漬け込まれていきます。
時間がきて火を離すと気圧が下がり上のコーヒーと混ざったお湯が下にあるフィルターを通して落ちていく仕組みですが、フィルターがあるので粉は落ちることなく雑味のないコーヒーを味わえます。
この抽出方法は、派手なので見ているだけで美味しいコーヒーに思えてくるから不思議です。
また、サイフォンは、お湯の量や時間などを固定しやすいので、ドリップコーヒーに比べていつでも同じ味わいのコーヒーを飲める特徴があります。
4.エアロプレス
比較的新しい入れ方のエアロプレスは、大きな注射器のような容器を使い、お湯とコーヒー粉を入れて時間を置き、ブランジャーを押して一気に抽出する方法です。
短時間で圧力をかけて抽出するので、コーヒーフレーバーをしっかり感じられるのにスッキリとした軽い味わいがファンを増やしています。また、エアロプレスは、誰にでも簡単に抽出できることでもコーヒーファンから人気を集めているのです。
5.水出しコーヒー
コーヒー粉を水に浸けて抽出する水出しコーヒーは、「ブリューコーヒー」や「ダッチコーヒー」とも呼ばれています。
インドネシアで生まれたと言われている水出しコーヒーは、挽いた豆をピッチャーや専用のポットに水と一緒に入れて時間をかけて抽出する方法で、お湯で入れるよりも苦味やえぐみがなくまろやかな口当たりになるのが特徴です。
喫茶店などで飲む水出しコーヒーは、専用のポットを使いますが、自宅でも簡単に作れるので夏場に美味しいアイスコーヒーを飲みたいと思った時におすすめの抽出方法です。
他にも、古くから中東やアフリカなどで入れられているお湯で煮出す抽出方法の「イブリック」、登山などのアウトドアで入れられる「パーコレーター」、浸漬法と透過法をミックスした新しい抽出方法の「クレーバーコーヒードリッパー」などもあります。
浸漬法の美味しい入れ方は?
ここでは、浸漬法の代表的な入れ方である「フレンチプレス」と手軽にできる「水出しコーヒー」の入れ方やポイントを紹介します。
フレンチプレスの美味しい入れ方
フレンチプレスは「コーヒープレス」、「カフェプレス」とも呼ばれ、圧縮式のコーヒー器具で抽出します。最大の特徴は放置するだけで良いところ。そして、高度なテクニックが必要ないため、好みの味を再現しやすい抽出方法と言われています。
1.コーヒー粉を入れる分だけ用意
少し粗めのコーヒー粉を1杯分約15g、2杯分約25gを目安に用意します。
【ポイント】お店で挽いてもらう場合は「フレンチプレス用」と指定します。コーヒー粉の量は、計量スプーンで正確に量ることが大切です。
2.サーバーとカップを温めておく
熱湯でサーバーとカップを温めておきます。
【ポイント】フレンチプレスでは、熱湯を使うことで、コーヒー豆の旨味を引き出します。
3.サーバーに粉とお湯を入れてタイマーをセット
サーバーに入れたお湯を捨てた後にコーヒー粉にかぶるくらいのお湯を入れて、タイマーを3分から4分にセットします。
4.お湯を足して蒸らす
さらにお湯をサーバーの3分の1程度入れて30秒ほど蒸らします。
5.再度お湯を入れる
30秒経ったら残りのお湯を入れます。
【ポイント】ここではお湯を静かに注ぎコーヒー粉を躍らせないことが大切です。
6.サーバーの蓋をして待つ
お湯を注ぎ終わったら、サーバーの蓋をして時間が来るまで待ちます。
【ポイント】ここでコーヒーオイルが浮いてきますが、このオイルが口当たりをまろやかにする秘訣です。
7.プレスを押し下げる
時間が来たら、静かにプレスを押し下げていきます。
【ポイント】粉が踊ってしまうと雑味が出るので、静かにゆっくりと押し下げることが大切です。
8.カップに注ぐ
抽出し終わったコーヒーを温めておいたカップに注ぎます。
【ポイント】雑味やアクが出るので、最後まで注がないようにします。
水出しコーヒーの美味しい入れ方
まず、自家製水出しコーヒーは飲めるまでに8時間〜9時間程度かかります。そのため、朝や日中にアイスコーヒーが飲みたい場合は、寝る前に作っておくと丁度良いでしょう。
1.材料を用意
コーヒー粉、水、容器を用意します。分量は、コーヒー粉100gに対して水1リットルです。
【ポイント】コーヒー粉は、中挽きで深煎りを用意すると失敗しないでしょう。容器は専用のものもありますが、自宅で作る場合は、麦茶を水出しするようなピッチャーでもOKです。水出しコーヒーは、水の影響を受けやすいので、なるべく雑味の出ない軟水を選ぶと美味しいコーヒーを作れます。
2.コーヒー粉と水を入れて少し置く
分量のコーヒー粉が入ったピッチャーに水を静かに注ぎ入れたら1時間ほど放置してコーヒー成分を抽出します。
【ポイント】コーヒー粉を茶葉やだしを取る時に使うパックに入れると後の処理が楽になります。
3.ピッチャーを冷蔵庫に入れる
1時間ほど置いたピッチャーを冷蔵庫に入れて8時間ほど寝かせます。
【ポイント】8時間経ったら、コーヒーを入れたパックをピッチャーから出すことが大切。そのままにしておくと雑味が出てしまう場合があります。
4.氷を入れたグラスに注いで完成
いつもとは違う浸漬法に挑戦してみよう!
浸漬法で抽出したコーヒーは、透過法のコーヒーよりもお湯や水と接触している時間が長い分、抽出成分が多く出て深いコクや旨味を感じられます。
入れ方によって苦味や雑味が出てしまいますが、普段よりも深いコクを味わいたい時におすすめの抽出方法です。
おうち時間が長くなった今、ぜひ、浸漬法でコーヒーを作ってみてはいかがでしょうか。